僕の尊敬する芸術家の一人に、Mさんという方がいます。
Mさんは、僕よりひと周り歳上です。
このMさん、作品が凄いのは言うまでもないんですが、
そのご自身の作品に負けず劣らず、生き方さえも実にストイックでして、
『これぞ、ロック!!』 という方です!
いつかこのブログで、Mさんの作品や人となりについて絶対に記事にしたいと思っておりますが、
今回は何の許可も頂いておりませんので、
大学の先輩であり、作家のMさんという表現に留めておきます。
Mさんは、とても変わった経歴の持ち主でして、
32歳で東京芸大油画専攻に入学する前は、プロボクサーをしておりました。
かれこれ、5,6年前でしょうかね・・・
Mさんが僕の個展を観に来てくださり、その時初めてゆっくりお話しをする機会を得られまして、
僕はますますMさんのファンになってしまいました。
Mさんは、決して饒舌な方ではありませんが、
僕が、「プロボクサー時代の話をぜひ聞かせてください!」と、
お願いしたところ、
練習のこと、リングに上がる気持ちや試合での心持ち・・・などなどを
実に快くお話ししてくださいました。
その中で特に印象に残ったのが、こんな会話です。。
Mさん 「下地くんは、ボクシングってどんなもんだと思う?」
僕 「観るのはすごく好きですが・・怖いですよね。だって、殴り合いじゃないですか!?」
Mさん 「殴り合いだと思うでしょ!・・でも、完全にそうでもないんだよね。。」
僕 「・・どういうことですか??」
Mさん 「俺も殴り合いだと思ってたし、殴り倒したくてボクシングを始めたんだよね。
それで、ジャブからストレートから練習してパンチを覚えてさ。
で、プロデビューして初めの頃ってのは対戦者も俺も実力がないもんだから、
子どもの殴り合いみたいになるわけ、本人たちは必死だけど、
あれは観ていて面白いもんじゃないだろうな・・・」
僕 「へぇ~、プロといっても最初はそういうもんなんですね」
Mさん 「あぁ、最初は観れたもんじゃないよ。
お互いすぐバテちゃうし、リズムも何もあったもんじゃないんだ。
でも、殴り合いたかったし、殴り倒したい俺としたら、それでも意外と充実してたわけ。
だけど、少しずつランクが上がれば上がるほど、
実力的に強い弱いってこととは関係なく、ポイントを上手く獲って、
確実に勝つための試合運びをする奴の方が勝ち残っていくんだよ。
でも俺はさ、それでも殴り勝ちたいわけ!
殴り倒して勝つのがボクシング本来のあるべき姿っていう妙な思い込みがあったし、
正直、練習サボってた事もあったりしたけど、俺パンチ力にはちょっと自信があったりしてさ。。
でも、それも、相手がこっちの打ち合いに応じてくれないことには成立しないんだよ。
一生懸命真面目に練習して、ランニングを苦にしない奴とかってホントにいてさ、
そういう奴って、やたらとスタミナあってフットワークばっか上手かったりしてさ。。
“打ってこいよ!”って言ってみたってダメだよね。応じてくれない。
プロボクサーやってて、“本当にこいつ強い!”って感じた奴って、
対戦した中で、2,3人しかいなかったなぁ・・・
後々、全日本チャンピオンになった奴とかもいたけど、強いって感じじゃなかったなぁ。
なんかそれで、“面白くねぇな”って思っちゃったんだよね・・・」
僕 「・・あ~~、なんか、Mさんの気持ちすっごい分かる気がします!」
Mさん 「これさ、俺、今の自分の作品や美術に対する姿勢と、全くおんなじなんだよね。
要は、観る人がどう思うか?とか、こうしたら売れるかな?とか、
いわゆるそういうポイントを上手く獲る“ウケ狙い”ってやつに全然興味が持てなくてさ。
つまり、何が何でもどうしても売れたい!っていう気持ちになれないっていうのかな・・・
殴り勝ちたいっていうのは・・・言っちゃえば、己の美学というか、
究極的に自己満足を追求してたっていうことなんだと思うんだよね。
だから、世間から認められたいって気持ちがないわけじゃないけど、
売れる売れないっていう、ボクシングで言う“勝ち負け”なんてことは、
俺にとっては“おまけ”みたいなもんで、別に大した問題じゃなくて、
ひとつの結果でしかない。・・そりゃ、勝ったほうがいいことはいいけどね。。
でも、それよりも大切なのは、自分自身に嘘なくやり切れるかどうかなんだよね・・・
誰にも真似の出来ない地点にまで到達したいよね!
俺頭悪いから具体的なヴィジョンなんかないけど、やるしかないでしょ!!
ま、今の俺が何を言っても負け犬の遠吠えだし、負け惜しみにしかならないけどね・・・」
僕 「・・つ、ついに見つけましたよ!Mさん、リアル『あしたのジョー』じゃないっすか~ッ!!」
ここで、Mさんの作品をドーーーンと紹介できたら、
この言葉たちにどれほどの説得力があるか分かって頂けると思うんですけど、
ん~~、実に残念ですねぇ~~・・・。。
知る人ぞ知る作家のMさん。
その言葉をここで紹介して、
ど~だ~、コノヤロー!って言ってる僕は、
もう完全なる 『虎の威を借る狐』 であることは間違いありません。
だって、僕自身が売れない絵描きであることは間違いのない事実ですからね。
だけど、この心意気だけは決して忘れたくないですね!
周りの人間(同じ絵描き同士でもいろいろありますからね・・・)は、
まぁ~本当にいろんなことを言ってくださいますからねぇ~~。
いずれにせよ、他人を蹴落とす方向に力を使うのではなく、
己の実力を高めるために時間と情熱を使いたいもんです。
先日、
牧野邦夫 ~写実の精髄~ 展 を観てきて、
牧野師匠の圧倒的なテンションとパッションのある作品群から、
Mさんとのこの会話を思い出し、
もう一度自分自身肝に銘じた次第でございます。
本物の実力をつけ、精進あるのみッ!!
売れる売れないっていう、ボクシングで言う“勝ち負け”なんてことは、
俺にとっては“おまけ”みたいなもんで、別に大した問題じゃなくて、
ひとつの結果でしかない。・・そりゃ、勝ったほうがいいことはいいけどね。。
でも、それよりも大切なのは、自分自身に嘘なくやり切れるかどうかなんだよね・・・
誰にも真似の出来ない地点にまで到達したいよね!
俺頭悪いから具体的なヴィジョンなんかないけど、やるしかないでしょ!!し び れ る~~~ッ!!!
以上、キツネがお送り致しました!

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